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生活再建支援カウンセリングの事例

相談の事例については、以下をご覧下さい。

貸金業相談・紛争解決センターでは、債務問題の抜本的解決に向け家計収支改善による生活の立て直し及び、買い物癖やギャンブル癖等により債務を抱えた相談者に対しての心理カウンセリングによる再発防止を目的とした支援を行っています。

事例1 (相談者=債務者の夫)

相談者 40歳代男性
来談経緯 妻(30歳代)の買い物癖に困っている夫からの相談。妻は、買い物のお金を得るために借金を繰り返しており、過去3回ほど返済の肩代わりをしてきたことを妻の親(義母)から打ち明けられた。相談者は、法的整理や貯金の取り消しによる清算などを考えたものの、肩代わりすることは本人にとって良くないのではないかと思い直し協会への相談に至る。
現状把握 使い道は主に友人との交流費、洋服や貴金属の購入。そのためのキャッシングを繰り返していた様子である。夫婦で話し合った結果、債務整理を選択。確定した債務に対し、半額は貯金の取り崩しで、残りは毎月の家計のやりくりで返済することとし家計管理は夫婦で一緒に行うことに決めた。妻は外交的で友人などと頻繁に交流しているが、それらの費用は自分のパート収入を充てているのだろうと相談者は思っていた。今後は付き合いをほどほどにすることと家計簿を付けることを指示したという。相談者は、「仕事が忙しく普段から家庭のことには関与してこなかったが、そのことで妻から不満を言われたことはない。でも、いま思うと普段の会話も必要最低限で、妻には子育てに対する夫への不満や寂しさを言えずにいたのではないかと思う」と振り返った。
援助・介入 相談者の解決イメージは、「妻には毎日の外出ではなく、せめて週に2~3日は家に落ち着いていて欲しい」、「誘われると断れないようなので、少しは断れるようになってほしい」、そうすればお金の使い過ぎも減るだろうとの希望が語られた。そこで、カウンセラーは「妻が落ち着いて家に居られた日はどのような過ごし方をしていたのか」についての行動観察を指示。そして、「恐らく奥さんは自分では意識していなくても、今日は家にいようと思って何かしらの努力をしたはず。その努力や工夫をできるだけご主人の力で引き延ばしていく方法を一緒に考え、”誘いを受けてしまう”という行動を減らしていきたい」との説明を行ったうえで、「妻が家でどう過ごしたかをさりげなく聴きとりながら、できる範囲で話題を広げて欲しい」と伝えた。逆に「家で少しはじっとしていろ」、「誘われてばかりじゃ困る」といった妻の反発を買うような発言はしないように依頼し、問題解決のためには、夫である相談者の協力が不可欠であることを強調した。次の面接では、課題の実行によって「子供の学校での役員同士の人間関係が大変だ」といった話しなど、多少とも妻と会話ができたことが報告された。カウンセラーは「大変上手に課題をこなしている。その調子で続けて欲しい」と伝え、次に「出かけてもお金を使わずに済んだ時のことも聴いてきて欲しい」と課題を付け加えた。出かけてもお金を使わなければ必ずしも家でじっとしている必要はないからである。同時に外出しても出費が少なければ、『よく抑えられたね』と褒めるように依頼した。この対応は、妻にとって触れられたくない話に”褒める”という行為を代替することで、”触れられても構わない”という枠組みに作り替えるためであることを説明し、何があっても決して怒ったり責めたりしないようにと付け加えた。
経過とメンテナンス 課題に取り組んだ結果、妻から”子育てへの不満や寂しい思い”についてポツリポツリと話が出るようになったとの報告があったため、その課題の継続とともに、「何か手伝って欲しいことがないか」と積極的に聴いてみるという課題を再追加した。何度か繰り返しているうちに、妻は当惑しつつも「子供に勉強を教えてやって欲しい」、「子供の父母会に一緒に出て欲しい」など、子供のことを中心にリクエストが出るようになった。一方、家計管理については余分な支出が徐々に減ってきているとのことである。相談者が感じた妻の最大の変化は、「妻が子供の事になると夢中で話をするようになった」ことだという。そして、本当は誰かに話したくて仕方がなかったのに、自分がそれを避けていたから友人との関係をつなぐために交際していたのではないかと改めて思ったと振り返る。最近は『主人の帰りが早くなっちゃって~』などと、友人からの誘いを妻が断っている会話が聞こえると喜んでいる。

事例2(相談者=債務者の妻)

相談者 30歳代女性
主訴 夫がギャンブルで借金を繰り返す。二度とギャンブルも借金もさせたくない。どうしたらよいか。
カウンセリングの状況 夫の借金の返済方法と借金の再発防止という2点の目標に取り組むことで合意。債務解決については弁護士へ依頼する方向となる。
見立て 相談者には、夫がギャンブルをして借金をしてしまうかもしれないという強い不安があった。夫の言動を一方的にとがめ、頭から否定してしまうなど、夫への不安感情を攻撃という形でぶつけてしまうと言う。カウンセリングを進めるにあたり、この感情のままでは夫の再発防止に向けての動機づけを阻害する懸念が高いため、まず、相談者の不安を軽減(除去)しながら関係改善を図ることから始めることとした。
介入
(課題の提示)
どんな時に不安が起き、どのように攻撃してしまうのかについて観察記録をつけてもらった結果、借金やギャンブルを思い起こさせるTV・雑誌等を見たときに不安の出現が多く、「許しておけない」「罰しなければならない」などの強い怒りの感情が湧き、夫を強くなじるという行動に繋がってしまうこと、そして、夫が黙り込んでしまうと、相談者としては怒りや絶望感、喪失感などが残ってしまうことを繰り返していることが分かった。
また、ごく日常的な場面においても、思い立ったらT.P.Oを考えず、一方的に夫に話しかけてしまい、夫が困惑するのを見ると更に不安感が高まることで、ますます一方的に話してしまうという悪循環になっていることも確認された。相談者は、決して適切な関わり方ではないことは頭では分かっているものの、ついこのような状態に陥ってしまうので直したいとのことである。
対策として、不安が生じた時はその不安を意識するだけにとどめ、言葉にしてしまうことに対し深呼吸や相談者本人のアイディアである”我慢カード”を見ることにより我慢してみるという対策を立てた。更に、夫に快く受け入れてもらえるような言い方をシミュレーションし、紙に書いてから伝えることとした。また、T.P.Oをわきまえずに夫に話しかけてしまう問題については、夫の状態をよく把握したうえで、話しかけてもいいかどうかについて確認するという対策を立てた。結果、喧嘩や一方的な言いあいが減少した。その理由として夫が相談者の話をうるさがることなく落ち着いて聴いてくれるようになったからとのことである。そのことで、相談者の不安感情が格段に減少。在宅時間が早くなった夫との交流の時間が増えたこともあって、夫は、家族の中での自分の役割や貢献を実感できるようになった様子である。それに伴い、ギャンブルへの依存欲求は低い状態を維持している。関係維持と定着化に向けて現在も継続的なカウンセリングを実施している。

事例3(相談者=債務者本人)

相談者 50歳代女性
主訴 通信販売で買い物をしてしまい、その返済に困って高利のヤミ金から借りてしまう。ヤミ金との付き合いも長期化しており、手を切りたいと思う反面、買い物癖が止まらない状態が続いている。
カウンセリングの状況 ヤミ金への対処については警察への相談を助言。警察から「今後、お金は絶対に払わないことをヤミ金へきちんと伝えることと、電話は着信拒否するように」と指導を受けたとのこと。本人は、夫の勤務先に連絡が行かないかといった不安を抱きつつ、警察の助言を確実に実行したとのことである。
ヤミ金への対応が一段落したところで、カウンセリングの主訴である買い物癖の改善に取り組むこととした。
見立て 買い物癖やヤミ金との付き合いが長期化していることにより、断ち切ったときに出現する”満たされない感情”とどのように折り合いをつけるのかが、今後の対策の実効性を確保する上での大きなポイントとなる。また、常習化した行動の変容を図る場合、趣味を強化するなどの代替行動は、暫定的に使うことはできても解消のための切り札にはならないことから、あくまでも社会性の拡張と依存対象のない生活に「慣れる」ことが最大の対策であることを主眼として介入する方向とした。
介入
(課題の提示)
日常の行動の中で、買い物したいという欲求が湧いた時と、その時の感情の強さについて記録することを課題として提示(観察記録)。この課題そのものが、買い物欲求の抑止につながっていることもあり、本人から物を欲しくなくなると寂しい感じもする」などの感情も語られている。さらに、買い物をしていた時期に抱いていた感情等を振り返ってみることや今の生活の落ち着きに焦点を合わせた聴き込みを行ったところ、友人との外出や同じ問題を抱える仲間(買い物依存の自助グループ)との交流が増えてきたことなどが効果的に作用している様子であった。
およそ2ヵ月後に誘惑に負けて買い物をしてしまったことがあったものの、「安かったとはいえ、さほど必要でなかった」との反省や「以前ほどうれしいとは思えない」などの思いが語られるなど、認知の変化が見られるようになったことから、自分がその気になりさえすれば買い物の他にも楽しみや喜びはいくらでもあるのだ、という枠組みが構築されてきた。さらに1ヶ月が経過したが、以前のようにカタログが届いても、欲しいという感情は湧かなくなっており、注文も行っていない状態が続いている。さらに定着をはかるために、現在も継続的なカウンセリングを行っている。

事例4(相談者=債務者本人)

相談者 40歳代女性
来談経緯 パチンコがやめられず自己破産後にヤミ金に手を出してしまった40歳代主婦からの相談。毎月、高額な返済を強いられており払えない。このままではどんな嫌がらせを受けるかわからないという不安が強い。またヤミ金に手を出したことが夫に知られると殴られるのではないかと恐れており相談に至る。
現状把握 パチンコ癖が原因で多重債務となり3年前に自己破産。それ以来、”パチンコをするのは夫と一緒の時に限ること”、”決してお金を借りないこと”を夫に約束させられたものの、自己破産の負い目から周囲の目が気になりパートを辞めてしまい家にいてもすることもなく、つい小銭を持って再びパチンコ店に足を踏み入れてしまった。その頃からヤミ金のDMが送られてくるようになり、最初は無視していたものの、返済は月に1回で良いと言われたことで、ついつい借りてしまったという。1万円を借りて1ヵ月後に1万5千円の返済を繰り返していた。今回は3万円を借りてしまい返済金は4万5千円。その返済の目処が立たない。親に頼むにしても、母親が自分のパチンコ癖の再発を疑いだした様子で言い出せない。払わなければどんな嫌がらせを受けるかわからないし、払うにしても夫へ相談するしかないが、夫の暴力はある意味でヤミ金よりも怖い。どちらにも動けないという状況に置かれている。
本人が一生懸命に考えた対策は、自己破産の際に世話になった弁護士に、以前と同じようにヤミ金との交渉を頼んでみるというもの。それなら夫の暴力を回避し、かつヤミ金への対処ができるかもしれない。そう考えるともう一度母親に頭を下げて弁護士費用を頼むこともできるし、それでだめならあきらめもつくという。二週間後の第2回目の面接では、弁護士の介入によってヤミ金からの督促がなくなったことが報告された。母親も弁護士の相談に立ち会ってくれたとのことである。ここまでの頑張りを相談員は称賛(コンプリメント)したが、相談者からは、今の心境として、”迷惑をかけた母親の信頼を回復したいこと”、”とにかくパチンコをやめられるようになりたいこと”、そして”今は仕事も友人との付き合いもなく、夫と二人きりの生活は寂しくて夢が持てないこと”が語られた。そこで、「仕事に就くこと」と「パチンコを二度としないこと」を目的としてカウンセリングを継続することで合意。健全な社会生活を営めるようになることが最終のゴールである。
援助・介入 本人から、「パチンコ」の原因については、(1)家事が一段落すると何もすることがなくなって寂しくなること、(2)話し相手がいないこと、そして「仕事」については、(3)パートの採用面接に行ってもいつも失敗してしまうことが語られた。この3つの問題点について話し合ったところ、(1)については、応急的には「寂しい気持ちを紛らわすために雑誌や音楽を聴く」、「散歩をする」、「日記をつける」、(2)については、「日中、時々は実家で過ごさせて欲しいことを母に頼んでみる」、「散歩に行った時に犬を連れた人に話しかけてみる」ことを試みる。(3)については、「今までの採用面接で聞かれたこととその答えた内容を振り返ってみる」ことを行動改善のための介入課題として提示した。
経過とメンテナンス 以降の面接では、散歩で顔見知りができたこと、母が週2~3日は歓迎してくれること、夫が採用面接官役になって面接の練習相手をしてくれるようになったことなどが報告された。カウンセラーはこれらの課題の実行と成果を称賛するとともに生活を改善するための自力があることを強調するなど、パチンコ癖の克服に向けてセルフエフィカシー(自己効力感)を高めるための対応を行った。しばらくして、夫や母親から買い物を頼まれるなど徐々に信頼が回復し、夫との面接練習では自分の話し方や態度がおどおどしていることがわかり練習を繰り返すうちに夫から『良くなった』と言われるようになったという。パチンコへの欲求もすっかり影を潜めており、そろそろ採用面接にチャレンジしたいという。